はじめに
指導教授は にこやかな顔で 言いました。 自然科学のような ふりをしてる詩を 学んでみてはどうかね? そんなことが できるんですか!? 指導教授は 私の手を握って 言いました。 社会人類学もしくは 文化人類学の世界に きみを歓迎するよ。 カート・ヴォネガット 人類学者というのは、 作家、小説家、詩人に なりそこねた人たち なのです。 J・クリフォード その他のジャンル
|
「ある学問がどんな学問なのかを
知りたければ、その学問を 研究している人びとが実際に どんなことをしてるかを まず見るべきである。」 (クリフォード・ギアツ) しかし、ギアツさん、いったい、どこで、どうやったら、文化人類学者と、彼/女たちがやっていることを見ることができるのでしょう? 実のところ、わたしたちが人類学者を目にする機会はそれほどありません。なので、代わりに文化人類学者たちの肖像写真を集めてみることにしました。文化人類学者になりそこねて、のちに文学者になったヴォネガットなら、この写真について、たぶんこんなふうにコメントしたことでしょう。 人類学者というのは「こんなかっこうをしている」 『チャンピオンたちの朝食』より ↓ ▼文化人類学アトラス(jpg /216KB)*クリックすると拡大します。 これは、ゲルハルト・リヒターというドイツの現代美術家が『アトラス=地図帳/図解集』という作品で考案した、写真のコラージュによる、対象の客観的提示という手法を応用したものです。ほかに、エド・ルッシュやダグラス・ヒュブラーといった写真家たちもこの手法を使った表現を行っています。これは、「文化人類学」という学問がいったいどういう学問なのかを、文化人類学者たちのポートレート写真を通じて実際に目に見えるかたちで提示・表現してみたものです。 左の一番上の写真は「人類学の父」と呼ばれるフランツ・ボアズです。その下がエミール・デュルケム、マルセル・モース、レオ・フロベニウスとつづき、レヴィ=ストロース、マリノフスキー、ルース・ベネディクトと、上から下へ、左から右にすすむにつれて、時代がくだってゆきます。 これを見ると、文化人類学という学問が、どのような時代に生まれ、どのような人種や性別、階級、そして年齢、風貌の人びとによって、行われてきたかがわかりますし、また、最近では、それがすこし変化してきていることもわかります。たとえば、初期の人類学者の多くは、イギリス人、フランス人、アメリカ人でしたが、最近は、インド、スリランカ、ヴェトナム、ラテン・アメリカ、カリブ、中国、日本など、さまざまな国籍を持つ人類学者がいます。こんなふうに、ものごとには、グラフィックなものやビジュアルなものをとおして、はじめて見えてくるものがあります。またそれはこうした「収集」や「比較」という作業によって、はじめてわかることも多いのです。 この講義では、おもにこうした視覚的な資料を使って、講義をすすめてゆく予定です。 [参考] ▼ゲルハルト・リヒター「48人のポートレート」(1971年) ▼ダグラス・ヒュブラー「作品44」(1971年) ▼エド・ルッシュ「26軒のガソリンスタンド」(1962年) --------------------------------------------------- [追記1] フランスの文化人類学で、映像作家であるジャン・ルーシュがアメリカの女性人類学者マーガレット・ミードを撮影しためずらしいドキュメント・フィルムがありますので、それを最後にご紹介します。マーガレット・ミードはなんだか魔法使いのおばあさんみたいですね。 ▼ジャン・ルーシュによるジャン・ルーシュ (wmv/3.86MB) ▼ジャン・ルーシュによるマーガレット・ミード (wmv/6.14MB)
by mal2000
| 2005-04-18 01:05
| |||||||
ファン申請 |
||